レポート
概要
景気後退の兆しが見える中、中国における日用消費財(FMCG)消費は依然堅調な成長を見せています。2018年におけるFMGC消費総額は年率5.2パーセントと、前年の4.7パーセントをわずかに上回りました。
過去8年間にわたり、ベイン・アンド・カンパニーとカンター・ワールドパネルは、中国で購入された106種類の中国人のFMCGにおける購買行動について調査してきました。
中国人消費者の高級化志向の高まりから、健康やライフスタイルの向上に寄与する高額製品がより好まれるようになっています。多くのカテゴリーで普及率や購入頻度が上限に達している中、平均的な販売価格はまだ十分な値上げの余地がある製品が多くあります。
また、今回の調査で初めて中国都市部のインターネット普及率が限界に達しつつあることが分かりました。2017年から2018年におけるeコマースチャネルの市場拡大は減速し、年率30.6%の成長に留まりました。(2014年から2018年は年率35.1%の成長)オンラインチャネルの急速な拡大に伴い、多くの実店舗が撤退し、下降の一途をたどっていましたが、オフラインの小売実店舗が勢いを取り戻しつつある兆しが見えてきました。小規模スーパーや、コンビニエンスストアでは屋外消費目的の飲食品販売の伸長などが後押しして、2018年には約2%の成長が見られました。
大規模形態の店舗は新たな役割を担うことで成長の可能性が出てきました。2018年に複数の大規模総合スーパーが、オンライン注文商品を30分で配送する物流拠点として機能することで、かつての勢いを取り戻そうという取り組みを開始しました。このような大規模チェーン店は生鮮食料品に特化することで差別化を図ることも可能です。
また、FMCG市場における中国新興ブランドの成長も市場に大きな影響を与えています。新興ブランドは消費者のニーズに見事に応え、R&Dからデジタルマーケティングまであらゆる側面において柔軟性とスピード感をもって展開しており、多くの大手ブランドに対し競争力をつけてきています。今、FMCG業界の経営層は「既存の大きなブランドを成長させることに注力するか、それともさまざまな顧客タイプやニーズに対応するために複数の小さなブランドから成るポートフォリオ戦略を採るべきか」という問題について、頭を悩ませています。これは大きな戦略変更を伴う決断です。10億ドル規模のブランドは2,500万ドル規模のブランドとは全く別物であり、全く異なる経営方針が必要とされるからです。
大規模店舗は、現在のマス向けオフライン店舗から、将来のマルチチャネルで展開されるような店舗、その場で購入することは勿論のこと、例えば店舗で食事ができるスペースがあったり、オンラインで発注し、配送してくれるようなシームレスな購買体験を提供できるような店舗に移行することで未来の成長を実現することも可能です。オフラインの小売店舗はこの新たな時代で戦うために戦術を磨く必要があります。具体的には、上記のようなシームレスなサービス展開を行うためのオペレーションのデジタル化に加え、ARなどの新たな技術を活用したより魅力的な店舗での顧客体験の実現や、消費者データを分析、活用し収益改善につなげるといったことを開始する必要があるのです。
ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで本レポート共同著者であるデレク・デンは、「中国の消費者がさらに洗練され、彼らが利用できるチャネルも進化するにつれ、この新たな時代に勝ち抜きたい企業は、勝つために何が必要かを十分に理解することが不可欠だ。」と述べています。
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