書籍
本書では変革のスピードと効果を一気に高め、組織の競争力を高める起爆剤となるAX(アジャイル・トランスフォーメーション)の考え方とその実践方法について論じています。アジャイルというと「ITやシステムのための開発手法」や「新しい商品開発の手法」だと思われがちですが、アジャイル経営とは、徹底的な顧客目線で試行錯誤を通し最適な方法を学ぶことを高速で繰り返すことで、変革・イノベーションを推進するための定評ある手法です。
コロナ禍によって事業環境が今まで以上に激変する中、企業は生き残りをかけてこれまで先送りにしてきた変革に取り組み始めています。しかし、変わらないことに慣れ、何かを変えるにしても既存路線の延長での改善に留まり、大きな変革に取り組んでこなかったが故、やらなければいけないこと(WHAT)はわかっているが、どうやればいいか(HOW)が難しいと思い悩む経営者が多く存在します。そして、ベインが企業変革の取り組みの結果について調査を行ったところ、成功したのはたったの12%に過ぎないということも分かっています。変革に踏み切ったとしても成功させることは容易ではありません。
しかし、AXを正しく実践すれば、企業はしがらみや大企業病から来る障害・抵抗を排除し、「顧客第一主義」と「ノーブルミッション(崇高な使命)」に回帰して、いわば外向きに徹底的に向き合う競争力のある企業へと自らを変革させることができます。どうすればAXを正しく導入できるのか、本書では具体的な事例を交えながら解説しています。
変革・イノベーションは通常業務にディスラプションをもたらすことが多く、「通常業務の遂行」と「変革・イノベーションの推進」という両輪をいかに同時に回すかということに企業のリーダーは頭を悩ませています。特に日本企業においては極めて通常業務の運営の呪縛が強い例が多くみられ、完成された組織であればあるほどその傾向は顕著です。変革を成功させる上で「早く失敗してそこから学ぶ」というサイクルを高速でまわすことが重要です。しかし、完璧を求めてしまう傾向が強い日本企業では、失敗を恐れずチャレンジし続けることができるようなアジャイル専任チームを組織できないと、変革が頓挫してしまいます。また、アジャイルプロジェクトを通常業務の官僚型プロセスで管理しようとしても、うまく機能しなくなります。一方で官僚型プロセスの全否定から入り、すべてをアジャイル変革・イノベーションプロセスに塗り替えようとすると、業務が壊れて回らなくなってしまいます。ともすると官僚型の仕組みは悪者扱いされがちですが、通常業務の安定した運営には欠かせません。本書ではいかにしてこのバランスを保ち、企業を強化していくべきかについても解説しています。
<書籍目次>
- はじめに
- イントロダクション
- 第1章: アジャイルはどのように機能するのか
- 第2章: アジャイルの拡大-社内でどこまでアジャイルを拡大するか
- 第3章: どのレベルまでアジャイルを適用すべきか?
- 第4章: アジャイルリーダーシップ
- 第5章: アジャイルな計画、予算、そして検証
- 第6章: アジャイルな組織、構造、人材管理
- 第7章: アジャイルなプロセスとテクノロジー
- 第8章: アジャイルの正しい実践法
- 第9章: 日本の企業への示唆
- おわりに
2021年8月20日に株式会社東洋経済新報社より全国書店にて発売。