論説
概要
ベイン・アンド・カンパニーは世界の3,900社を調査し、過去の景気後退期に勝敗を分けた勝者、敗者の取り組みにおける共通項を特定しました。景気後退はより一層、企業の成長と失速を際立たせます。
10年を超え、長期間続いている景気拡大は、米中貿易戦争、ブレクジット、欧州諸国の経済的不安定性といった世界情勢からも、そう長くは続かないことが予測されます。ベインの最新の調査をまとめたレポート「不況時にこそ躍進するための戦略」によると、前回の景気後退局面において、以前から景気後退に備えて周到な策を講じていた企業は景気後退期、そして景気回復後においても成長し続けていたことが分かっています。そのような企業は強固な防御と攻めを並行して行っており、出費を抑制しながらも成長のための投資を行っていました。
不況は、より明確に勝者と敗者を分け、勝者はその後の景気回復期において利益と時価総額を大幅に拡大させていたことが明らかとなっています。敗者は景気後退期において年平均成長率(CAGR)が0%であったのに対し、勝者は17%のCAGRを達成し、景気回復後においても、敗者のCAGRが1%であったのに対し、勝者のCAGRは13%を達成していました。
勝者となった企業は、景気後退前から準備を周到に進めていました。コスト構造を見直し、無駄なコストの削減を徹底しつつ、同時にどこに積極的に投資するべきかを厳格に見極めていました。慎重になりすぎて全てを停滞させるというのではなく、成長のために必要な攻めの姿勢をとることは無駄なコストを削減するのと同様に重要で、優良企業は大抵厳しい経済環境下においてこそ、よりマーケットシェアを拡大してきたのです。
ベインのパートナーであるトム・ホーランドは「不況は陸上競技のトラックの急カーブ部分のようなもので、競争相手を抜き去るには最適な地点だが、直線部分で抜くよりも高度なスキルが必要となる」と述べています。勝者となる企業は、景気後退期にも費用を投じて次期ビジネスモデル候補となるプロジェクトを割り出し、景気回復前に投資と雇用に着手していました。
反対に、敗者となった企業には大幅なコストカットこそが企業を安定させるという誤った考えのもと、手当たり次第コストを切り詰め、成長をも失速させてしまった企業や、自社のコアとなるビジネスとは無関係の、市場で注目されている新たなセクターやツールに投資するも、成長を実現できず投資が失敗に終わってしまったといった企業が多くありました。また、景気後退時は業績低迷が続いていても他社の様子見をしていて慎重になりすぎ、景気回復の兆しが見えてからはじめて投資を再開する企業もありますが、それでは既に市場が高騰していて投資効率が悪く手遅れになってしまうのです。
今回のベインの調査より、勝者となるための4つの重要な取り組みが特定されました。
- 景気後退到来前に行う自社の成長戦略に合致したコスト・トランスフォーメーション
- 企業戦略に沿った財務戦略をたてるために、ゼロベースで見直す財務
- 攻めの姿勢で行う成長のために厳選された再投資
- 将来を見越したM&Aの推進
ベインのパートナーであるジェフ・カジンは、次のように述べています。「勝者となる企業は、未来の状況と、自社の未来のあるべき姿を想定し、そこに到達するために必要なマイルストーンを特定するために未来像から逆算して考えています。そうすることで、景気後退時における機会を有効に活かすことができるのです」勝者となる確率を高めるには、景気後退期、及び景気回復後も成長できる企業を目指し、攻めの施策を今後数年先まで綿密に複数計画し、来る景気後退に備えることが重要なのです。
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