Press release

ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「コロナ復調期における小売業の『七つの勝ち筋』」プレスセミナーを実施

ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「コロナ復調期における小売業の『七つの勝ち筋』」プレスセミナーを実施

  • 2024年9月3日
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ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「コロナ復調期における小売業の『七つの勝ち筋』」プレスセミナーを実施

戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド(以下ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は「ベイン・アンド・カンパニーからの提言 コロナ復調期における小売業の『七つの勝ち筋』」と題したプレスセミナーを2024年8月27日(火)に実施いたしました。

コロナ復調期においてアジアパシフィック圏は明らかに復調しつつある一方、日本は「成長余地」が低く、「競争変化のレベル」も低く位置付づけられています。このような状況のマーケットでは、生産性を高め、新たな成長をけん引する事業・地域への仕込みが不可避となります。
今回のプレスセミナーでは、小売・消費財に関する知見と経験の豊富な2名の登壇者が、ベイン・アンド・カンパニーが提唱する「七つの勝ち筋」をご紹介しました。また、日本の小売業界が収益を伴う成長に向けてどのように道を切り拓くべきか、特にEC化が諸外国に比べて遅れている日本において、どのように収益を伴うECを実現していくかについて、最新の業界動向を交えて解説しました。

 

■スピーカー

パートナー 堀之内 順至

シニア マネージャー 石本 健吾

 

■アジアパシフィック圏と日本の小売業

 日本はアジアパシフィック圏の国々に先行して人口減少のインパクトに直面しています。この危機を乗り越えるためには、これまで経験したことのないような企業変革が不可欠です。今回のプレスセミナーでは、特に人口減少の影響の大きい小売業に焦点を当てて解説することで、国内小売業における変革のモメンタムを醸成する重要性を強調しました。  
 セミナーの冒頭、堀之内は2017年から2023年のアジアパシフィック圏における小売業の成長率を示しました。コロナ前にあたる2017年から2019年は低減しており、コロナ禍を経て停滞、現在は復調期にあり、グローバルに比べて大きかったへこみを取り戻しつつあると説明しました。

アジアパシフィック件の小売業成長は停滞.png

 

■小売業の「七つの勝ち筋」

 企業の成長に向けたチャレンジは、小売市場における経済指標の「成長余地」と、既存のビジネスモデルと新規のビジネスモデルとの競争の激しさを意味する「競争変化のレベル」の二つの軸によって整理され、国ごとに異なります。日本は成長余地が低く競争変化のレベルも低いと評価されており、現業を再活性化させ、主体的な事業モデルの変革が成長する上で求められます。
 続いて堀之内はベインが提唱する「七つの勝ち筋」を紹介し、七つある勝ち筋のうち、日本において特に重要な三つを取り上げて解説しました。

  1. データ活用・自動化を通じて生産性向上を再定義

     近年主要な企業が既に取り組んでいるように、業務の改善というレベルを超えたデータ活用や自動化を通じて、生産性の向上を徹底することが肝要です。「特に(データ活用や自動化は)現業を再成長させるためには非常に重要なポイント」と堀之内は主張し、中長期的な目線で経営課題として全社で横断的に取り組んでいく必要があると強調しました。

  2. 将来の小売業のあり方から逆算し、有形資産・投資を再考

     小売スペース(店舗の販売スペース)を事業のポートフォリオに合わせて再考することも重要な勝ち筋のひとつです。
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     2019年から2023年における、小売スペースとオフライン売上の年平均成長率を国別で比較すると、日本はオフラインの売上が減少しているにもかかわらず、小売スペースが微増しています。欧米などの小売企業がオンラインにシフトし、リアルの販売スペースが減っているという実態とは異なっており、再考の余地があるのではないかと堀之内は示唆しました。今後予想される人口減少に伴ってリアルのトラフィックが減少する中で、顧客のライフタイムバリューを高めるために、日本の小売企業はどのようにEC化を進めていくべきかを考える必要があります。

  3. 「モノ売り」を越えた新領域の事業成長を加速

     今後、日本が人口減少社会へ突入するにあたって、小売業を越えた収益源を開拓することは非常に重要です。堀之内は「既存の事業を今のまま拡大するだけでは必ず低減していく」と警鐘を鳴らし、販売カテゴリを増やす、地域を拡大する、新たなビジネスモデルの確立など、コア事業を越えた事業の拡大と利益成長が求められると強調しました。

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 小売業の利益率は一般的に一桁%とされており、今後起こる人口減少により大きな影響を受けるため、現在の販売網や利益を維持できるかという点が非常に重要です。このような課題に対して、サプライチェーンを抜本的に見直す必要性が高まっており、近年の2024年問題に伴う陸運業界の業界再編の事例、及びサプライチェーン変革を検討する視点を解説しました。
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■ 収益を伴ったECの成長加速

 セミナーの後半は、主にリアル店舗に焦点を当てた前半を踏まえた上で、現在日本が他国に比べて後れを取っているEC化について石本が解説しました。
日本におけるEC化率.png

 人口減少社会に伴うサプライチェーンの組み替えは、リアルだけでなくオンライン(EC)にも大きくかかわっています。現在、日本のEC化率は1割に満たないという水準であり、他国と比較して低い位置づけにあります。一方で、収益を伴ったECを確立できている小売企業はグローバルにおいても稀であり、リアルの小売りに比べて平均して最大10%ほど低い収益性となっています。このような実情を踏まえ、ベインが提唱する「ECビジネスにおける『収益を伴った成長加速』モデル」について石本は紹介・解説しました。

ECビジネスモデル設計図.png

 

 このモデルは4つの要素を一気通貫して設計することを推奨しています。
 1つ目の要素は、高収益なECエコノミクスの組み立てです。これまでのECビジネスでは、トップラインの成長に注力しており、コストの改善は優先度として劣後されてきました。しかしながら、自社にとってあるべきPLの姿を見直し、自社の業態の特徴や譲れない部分を明確にしながら自社ならではのエコノミクスを組み立てることが出発点として必要であると石本は強調しました。
 2つ目は顧客体験の磨き込みです。ECでは、小売の基礎(品揃え、価格、品質)に加え、顧客体験の磨き込みがリアル小売に比べて重要さを増しています。リアル店舗では立地という点が差別化のために重要なファクターである一方、オンラインではクリックひとつでさまざまなWEBサイトに遷移できるため、立地ではなく顧客体験という観点から競合と差別化していくことが重要です。
 3つ目は、購買ファネル(サイト流入から購入するまでの一連の流れ)の継続的改善です。具体的には、ECサイトを細分化し、各ページのコンバージョンをトラックすることで、どのページから流入・離脱しているのかを特定し、最適化を図ります。データが取得できるECビジネスならではのメリットを活用しながら、測定と改善で購買ファネルでの取りこぼしを防ぐことが不可欠です。さらに諸外国の先進企業では、ロイヤルティプログラムや顧客内コミュニティなどデジタル技術を駆使し、顧客との関係をさらに強化する取り組みが進んでいます。
 最後に、取り組みを下支えできるECに特化したケイパビリティを具備することです。ECエンジンやカスタマーデータプラットフォーム、コンテンツマネジメントシステム、インテグレーションなど様々なケイパビリティを構築・強化していく必要があると石本は解説しました。

 セミナーの最後に堀之内は、中期的な人口減少が不可避な日本において地域生活の存続のためにも、小売業は勝ち切れるモデルを作る必要性があると再度強調しました。そして人口減社会に対応するためには、過去に経験したことのない未来を描き、自社が勝てる戦略に昇華させ、未来に向けた周到な準備を競合に先んじることが肝要であると締めくくりました。

 

本件についてのお問い合わせ先

ベイン・アンド・カンパニー マーケティング/広報
Tel. 03-4563-1103 / marketing.tokyo@bain.com

ベイン・アンド・カンパニーについて

ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。

商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL   : https://www.bain.co.jp