Press release

生保業界の成長を加速させるアジア市場

生保業界の成長を加速させるアジア市場

リスク対策サービスの強化やデジタルチャネルに消費者の期待高まる

  • 2023年3月3日
  • min read

Press release

生保業界の成長を加速させるアジア市場

アジア市場における生命・医療保険料の成長率はその他地域を上回っており、2030年まで成長し続けることが予測されることがベイン・アンド・カンパニー(以下ベイン)の調査で明らかになりました。

アジア太平洋地域の新興市場では、2019年から2025年にかけて生命保険料が年平均6~7%成長することが予測され、当該地域における成長トレンドを牽引することが期待されています。また、同地域の先進国/地域(オーストラリア、香港、日本、シンガポール、韓国、台湾など)では、2~3%の緩やかな成長が見込まれています。

ベインのグローバル保険業界プラクティスのリーダーであるHenrik Naujoksは、「アジア太平洋地域では高齢化や中間層の増加などの要因により、保険サービスに対する需要が高まっている一方で、保証されるべき顧客に保証が提供されない「プロテクションギャップ」の拡大や医療費の増加に対する消費者の懸念は一層大きくなっています」と述べています。

日本を除くアジア地域のプロテクションギャップは、2030年までに200兆ドルに倍増、また医療費は同年までに2.5倍以上増加し9兆ドルに達すると見込まれ、そのうち半分以上が自己負担によって賄われると見られています。

ベインが2月16日に発表した最新レポート「2023年保険業界における顧客行動とロイヤルティ :グローバル版 (Customer Behavior and Loyalty in Insurance: Global Edition 2023)」では、近年の激しい世相の混乱や不確実性が高まる中で、顧客が保険会社に求めるものが「保障」の概念を超え、日常生活上の「リスクの軽減」、さらには「リスク回避」になりつつあることを明らかにしました。

一方、オーストラリア、香港、日本、シンガポールなどの14市場を対象とした本調査では、消費者の多数がリスク対策サービスの利用に関心を示しているものの、実際に保険会社のリスク対策サービスに加入していると回答した消費者は少数に留まっており、シンガポールで4.1%、日本では2.5%でした。

ただし、個人のプロフィール、健康状態、財務状況、ホームセキュリティに関するデータを保険会社と共有してもよいと回答した消費者の割合は高く、事業成長の機会は大きいと言えます。香港は85%、シンガポールは83%と他国をリードしている一方、日本は50%、オーストラリアは67%という結果でした。

Naujoksは、さらに「今後10年のトレンドとして、保険業界の中心的な役割が、損失の補償から、リスクソリューションの提供に移行すると考えています。この機会を掴むために、保険会社はまずデジタル化をより一層促進させる必要があります」と述べています。

行動変容、リスク特定・追跡・管理の高度化などにより、顧客や政府・自治体と共同でリスク回避に取り組んでいる保険会社もあります。大手の生命保険会社や医療保険会社は、健康管理ツールのサブスクリプション購入などリスク対策サービスに加入した顧客を対象に、保険料の割引や無料健康診断の提供などの特典を提供し始めています。例えば、プルデンシャルの「Pulse」やAIAの「Vitality」プラットフォームでは、ウェアラブル端末を活用して、健康管理データをリアルタイムに収集しています。マニュライフの「MOVE」やアクサの「Emma」は、アプリで緊急時サポート、保険商品の購入、運用状況の確認、財務ニーズの分析などを行うことができます。

デジタル化ニーズの高まりにより、インシュアテック企業の市場参入も活発になっています。ベインが発表したレポート「シンガポールFinTech Festival 2022からのインサイト(Insights from the Singapore FinTech Festival 2022)」では、消費者はインシュアテック企業に対し、シームレスな体験、セルフサービスの選択肢、パーソナライズされた体験を求めていることが分かっています。

ベインのシンガポールオフィスのパートナーであるSumit Narayananは、次のように述べています。「保険業界においても地域や保険種別を超えた規制の変化が見られます。例えば2020年に新型コロナが世界的に蔓延した際、マレーシアやインドネシアの規制当局は、消費者の利便性向上、保護、データプライバシーへの取り組みの推進を目的として、保険商品のオンライン販売を支援し監督するための法整備を実施しました。今後もアジアの規制当局は、持続的な成長、デジタル活用、顧客にとって安全な取引のために中心的な役割を担っていくでしょう」

また、ベインの調査によると、消費者の心理や行動はリスク回避の観点にとどまらず、パーパスによっても左右されることが明らかになっています。回答者の約80%は、保険会社がESG(環境、社会、企業ガバナンス)への取り組みを提案に組み込むべきだと考えており、グローバル全体でみると59%の回答者が、生命保険会社が健康的な生活に対して特典を付与することを望んでいます。ベインの東京オフィスのパートナーである森島勇介は「ベインの調査でも、日本も含めたアジア市場での消費者のサステナビリティへの意識は高まっている。一方で保険会社がサステナビリティをリテールビジネスにつなげ、パーパス・ブランドを高める動きは端緒についたばかりで、今後差別化のポイントになりうる」とコメントしています。

今後、保険会社には損失の補償からリスク回避への転換、機能性の高い製品からより顧客の感情や社会的ニーズに寄り添った対応への転換が求められます。また、プッシュ型の営業から、優先課題を適切なタイミングで引き出し解決することによる顧客獲得への転換を図ることも必要です。いずれも短時間または容易に達成できることではありませんが、保険会社は一歩進んだ消費者の考え方や声に耳を傾けるべき時が来たと言えます。

 

本件についてのお問い合わせ先

ベイン・アンド・カンパニー マーケティング/広報
Tel. 03-4563-1103 / marketing.tokyo@bain.com

ベイン・アンド・カンパニーについて

ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。

商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL   : https://www.bain.co.jp